産総研、シリコンを超えるGaNとSiCを一体化したハイブリッド型トランジスターの動作実証に成功

産業技術総合研究所(産総研)は12月12日、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスターと、炭化ケイ素(SiC)を用いたPNダイオードを一体化したハイブリッド型トランジスターの製作と動作実証に、世界で初めて成功したことを発表した。これは、産総研先進パワーエレクトロニクス研究センターパワーデバイスチームの中島昭主任研究員と原田信介研究チーム長の研究によるもの。

これは、電力エネルギーの変換や制御を行う電力変換器に使用されるパワートランジスターの一種。パワートランジスターは電気的スイッチとして用いられるため、次の3つの性能が求められる。

  1. 高効率な電力変換を実現するための、スイッチオン状態における導通損失を減らす低いオン抵抗
  2. スイッチング損失を減らすための、オンとオフの高速な切り替え性能
  3. 電力変換回路の異常動作時におけるノイズエネルギーの吸収源としての役割

現在の主流になっているシリコン(Si)トランジスターは、この3つの性能がほぼ限界に達していることから、効率の高いGaNトランジスターの研究が行われてきた。シリコントランジスターには、構造的にソースとドレインという2つの電極がPN接合されているため、本来的にダイオードの性質を持っている。ところが、GaNトランジスターにはそれがない。ダイオードは本来、片方向にだけ電流を流す性質があるが、パワートランジスターに含まれるダイオードには、過電圧がかかったときに一次的に逆方向に電流を逃して(アパランシェ降伏)、熱として消散させ、ノイズエネルギーを吸収する役割を果たす。つまりGaNトランジスターでは、求められる性質の3つ目である、異常動作時におけるノイズエネルギーの吸収が行われない。それが、普及の妨げになっていた。

産総研は、そこにSiCダイオードを追加して一体化することで、アパランシェ降伏動作を得ることができた。さらに、このハイブリッドトランジスターでは、GaNトランジスターのオン抵抗が低く、SiCダイオードの熱伝導率はシリコンの3倍と高いことが認められた。そのことから、次世代電力変換器の高効率化と信頼性向上が期待される。

今回開発したハイブリッド型トランジスターの構造

今回製作されたのは、定格電流20mA(ミリアンペア)程度の小さなものだが、今後は10A(アンペア)程度の大きなものの動作実証に取り組むとのこと。また、GaNとSiCの融合技術は、ハイブリッドトランジスターの他にも多くの可能性が期待されるという。

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